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プロフィール

水谷 薫
大学4年生・メディア研究専攻。このブログは大学ゼミの一環で制作したものであり、内容も水谷本人が執筆・編集したもの。

参考書籍

5. その他の諸問題

出版社はその役目を終えたのか。そうとも言い切れない。製造と流通に関連した部門の縮小は避けられないだろう。今後も倒産を余儀なくされる出版社も出てくるはずだ。また書店も経営を圧迫されることは疑いようがない。しかし前述の通り、蓄積された編集のノウハウは一朝一夕にまねできるものではない。目先の利益ばかりを追求する本作りを止め、読者ないしは著者のニーズに応えるという本来の役割に立ち返れば、充分ビジネスとして成立するだろう。特に著者ニーズに応える形においては、文芸社などが提供する自費出版が、今日でも一定の評価を集めている。

出版社が介在しないことで、トラブルが起こる恐れもある。既に電子書籍の業界でも、編集者(出版社)が介在しないために、詐欺まがいの書籍が販売されるという事態が起きている。2~3年前から流行の「情報商材」と言われる電子書籍がそれだ。儲かる方法や異性を口説く方法など、人のコンプレックスに根差した内容に著しく偏っているのが特徴である。内容はいわゆるハウツー本となんら変らない。書店で購入すれば通常1,000円程度のものだ。それを、コンプレックスにつけ込み10,000円~20,000円という高額で販売している。しかも、情報を得れば即、効果が得られるように煽って購入を促しているのだ。購入後に「騙された、この費用だから特別な内容が載っていると思った」と読者が訴えるトラブルが頻発しているという。ひどいものでは「儲かる方法」を購入したところ『この電子書籍をそのまま他人に売れば儲かります』と書いてあったなどという、まさに詐欺としか言いようのないケースもある。ここまであからさまな詐欺でなくとも、同様の事例は頻発するだろう。

出版社というフィルターが無くなる事で、粗製乱造の懸念もある。出版と流通のコストがゼロに等しいため、著者らは安易に作品を発表できる。結果、価値ある作品が大多数の駄作に埋もれてしまう。市場に流通させるべき作品の採用・不採用を決めるのは、まさに出版社が担ってきた分野である。多くの人に紹介する価値のある情報かどうかをレフェリングする作業は、万人にできるものではなく、これこそ出版社の長年の蓄積が生きる分野ではないか。

電子書籍の普及に伴い、今後も予期されない諸問題が発生することだろう。それを確かな知識と経験で解決するソリューション・パートナー。これこそが将来的に出版社の歩むべき道なのかもしれない。

Kaoru Mizutani 2010/04/10