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プロフィール

水谷 薫
大学4年生・メディア研究専攻。このブログは大学ゼミの一環で制作したものであり、内容も水谷本人が執筆・編集したもの。

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4. 電子書籍の印税と、著作権

電子書籍の普及に伴い、出版社だけが変化するのではない。著者はどのように変わるか。読者はどう変わるか。果たして作家という職業は、今後も成立しうるのか。

作家の生活を支えるのは、いわゆる印税(いんぜい)である。書籍の売上に応じて、出版社から著者に支払われる印税。契約条件は様々だが、通常は売価の10%程度と言われる。文芸社などが手掛ける自費出版でも、しっかりと印税は支払われる。一方キンドルが著者に支払う印税は、固定で35%を採用。さらに一定の条件を満たしたものには70%の印税を支払うとしている。これは非常に高い数値と言えるだろう。この高い印税率があれば、従来出版社が得意としてきた大量生産・大量配本のネットワークに頼ることなく、著者は"食っていける"可能性が高まる。これまでは出版社の存在が、著者の生活を支えていた。だが必ずしもそうではない時代が到来する予感だ。この点においても、出版社の存在意義は薄れていくと言えるかもしれない。

高い印税率を実現する仕組みはシンプルだ。電子書籍は、製本も裁断も配本もする必要がない。したがってアマゾン社ら電子書籍のベンダー企業にとっては、いくらか初期投資を行い電子書籍をダウンロードさせるシステム(サイト)さえ作れば、その後はほとんどコストがかからない。流通にかかるコストがかからない分、著者への還元が可能になるのだ。著者とベンダー間のトラブルも最小限で済むだろう。何冊売れたのか、デジタルデータであれば誰の目にも明らかとなる。売上の計算は明確で、金銭トラブルは起こり得ない。原稿用紙を汚したり紛失するような事故も、ほとんど起こらないのではないか。

読者もまた書籍電子化の恩恵を受けるだろう。流通コストの呪縛から逃れたベンダーは小売価格を下げることも可能であり、その実現は間違いない。 このように著者、読者、ベンダーらにとっては有益なことばかりだが、問題もないわけではない。確実に予想されるトラブルは、権利保護の問題である。デジタルデータはコピーが容易であり、著者の権利を守れるのかどうか、今後も常に争点となるだろう。データの不正コピーはベンダーの利益を直接奪う行為でもある。Google社が過去に日本で発表された書籍のデータ(本文)を無償で一般公開しようとして、権利者、出版社とのトラブルに発展したこともあった。

コピーにまつわる諸問題は、データを扱うビジネスとは切り離せない。永遠の課題としてついてまわるだろう。

Kaoru Mizutani 2010/04/10