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水谷 薫
大学4年生・メディア研究専攻。このブログは大学ゼミの一環で制作したものであり、内容も水谷本人が執筆・編集したもの。

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2.電子書籍の優位性と難点

電子書籍とは何かを定義するならば、書籍のデータをデジタル機器で閲覧できる形にまとめたもの、と言えようか。この発想自体は新しいものではなく、日本でもまだパソコンがマイコンと呼ばれていた頃、1986年には既に、日本電子出版協会(JEPA)が設立されている。書籍をデータでやりとりできるようになれば、物理的なスペースも必要なく、劣化もしない。流通の費用も必要ない。乱丁、落丁などの印刷トラブルとも無縁だ。書き手にとっても、流通費用がかからないことのメリットを享受できるだろう。
文芸社などの自費出版サービスはプロの編集が入ることが魅力のひとつだが、気軽に作品を発表したい著者にとっては、選択肢が増えることになるからだ。また、マイコンに文章を入力できれば、原稿用紙さえ不要になる。電子書籍の利点は、枚挙に暇が無い。しかし今日まで、電子書籍が本格的に普及することはなかった。これは第一に、デジタル機器(デバイス)が、閲覧に耐えうるレベルに達していなかったことが原因として挙げられよう。

キンドルしかし時代は変わった。アメリカでは2007年11月にアマゾン社より電子書籍の閲覧専用デバイスであるキンドルが発売された。発売当初よりキンドルの操作性はすこぶる評判がよかったが、さらに発売開始からおよそ1年後の2009年2月には、ユーザーからの評判・批判を基に、細かな意見をも採用して仕様を見直した第二世代のモデルを出荷開始。アマゾン社は出荷台数を公表していないが、既に数百万台販売されたとみられている。そして携帯電話「iPhone」上でキンドルが動作するアプリケーションの発表によって急速に普及が進み、2009年5月の時点で、キンドル用書籍データの売上は、紙媒体の売上の35%にまで成長しているという。

電子書籍の市場規模は2008年で154億円、2009年は推定250億円程度であったと言われており、2015年には1300億円程度まで拡大すると予想されている。この流れによって既存の出版社が大打撃を受けるという見方が強まっている。先述の通り、電子書籍は紙の書籍と比較して、大変な優位性を持っている。これは不可避の変化だろう。
電子書籍の世界においては、出版社を介することなく作品を流通させることが可能なため、著者が自らのホームページで作品を発表したり、ベンダーのサイトに自ら登録するなど、おのずから自費出版化してゆくだろう。現在紙の書籍ににおいても文芸社など自費出版を得意とする出版社は存在するが、目指す方向の全く違う自費出版である。編集が入らないためクォリティは不安定だが、高スピード、低費用を重視したデジタルの自費出版。今後も順調に普及していくのではないだろうか。


※アマゾン社のキンドルを紹介するニュース

Kaoru Mizutani 2010/04/10